この7日間でUSDGCが彼らに与えたものとは何だったのだろう。世界のレベルの高さを全体としては身にしみて感じながらも、「対抗できる一瞬」というものも同時に体験したのではないかと思う。彼らにも、上位選手たちに引けをとらないスローができた瞬間があったのではないかということだ。トップを争う選手たちと決定的に異なる点は、なんと言っても「高精度なスロー」にある。実広君はレポートの中で次のように書いている。「120m先にコントロールできる精度があれば、世界でも戦える」と。 |
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私は2003年のバリー・シュルツとケン・クライモの10ホールに及ぶプレーオフの死闘を想い出した。最終18番ホールで両者が同スコアで並び、以後、18番、1番、17番の順に延々3回、計9ホールを両者全てバーディーを続けていた。10ホール目となる、プレーオフ4度目の18番ホールでバリーはまたもバーディー、ケンがパーでようやく決着がついた。同じホールをぐるぐると回る内に、2人の本当の凄さを見せ付けられたような気がした。各ホールともそれぞれがそれぞれの攻め方で、毎回ほぼ同じスローを繰り返していくのである。「あれっ!
さっきもこのホールでここに投げてたな」という具合にだ。4日間戦った直後である。最も緊迫する場面にもかかわらず、両者は精神的に崩れていくことなど欠片も無く、坦々と予選通りのプレーを続けるという離れ業をやってのけたのである。スローの精度の高さと、経験から来る勘、そして強靭な精神力を、誰よりも併せ持ったものだけが王者の称号を手にすることができる。「対抗できる一瞬」が一瞬で終わらず保持し続けることができたなら、日本選手の本当の世界進出が、また一歩、現実味を帯びてくるのではないかと思う。 |
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我々ヒーローが取り組むこのサポート・プロジェクトは今回が1回目。今後の持続にはその度ごとのステップアップが必要不可欠であることは言うに及ばない。今回の4選手の目にどのように映ったのかを正確に把握することは困難だが、少なくとも現地での、プレーに限りなく専念できる環境作りの一助にはなったことは確かであろう。仮に全てを選手自身が準備し、計画を立てたとしよう。更には言葉の壁を易々と乗り越え、普段通りの実力を発揮し、海外の兵達と互角に亘りあう、そんなスーパーマンは現代の日本ディスクゴルフ界には未だ存在しない。そこへ向かう階段が必要だ。ようやく踏み出せた大きな一歩なのである。我々が夢に見、想い描く未来のディスクゴルフ像とは、きっとそんな階段をひとつずつ上り続けた先に広がる世界にあるもの。今回の彼らの、健闘ぶりは必ずや皆さんの意識を向上させ、動機付けとなり、次世代に繋げる重要な一歩になったであろうと確信している。 |
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USDGCの日本代表選考会を兼ねたジャパンオープン2006は、6月に前回同様、那須ハイランドゴルフクラブでの開催が既に発表されている。海外有力選手も続々と参加に名乗りを上げており、オープンには、前回の覇者エブリー・ジェンキンスは勿論、USDGC'05覇者のデビッド・フェルドバーグ、11度の世界王者ケン・クライモ、雪辱を誓うバリー・シュルツ、PDGAプロワールド'05覇者ネーザン・ドス、他にもブラッド・ハモックやリック・ヴォークスなどビッグネームが並ぶ。レディスでは、前回覇者のカール・バールに女王ジュリアナ・コーバーが戦いを挑む。同じ土俵で刀を交えることで体感するであろう凄まじいまでの技の数々に、どうか心からか驚嘆して頂きたい。高鳴る期待を今から抑えられずにいるのは我々だけではないはず。皆さんもまた、チャレンジャーの一人としてプレーし、ディスクゴルフを通しての国際交流を含めたジャパンオープン2006を満喫して頂きたいと思う。 |
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今回でこのシリーズは最終回となる。一人でも多くの、未来のファンに成り得る皆さんへ向け、この興奮や感動、緊張感や空気を伝えたいと念願してここまで書き貫いてきたつもりだ。一端でも感じ取って頂けたらこの上ない。 |
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今年もUSDGC'06へ向け、新しいチャレンジャーがそのチャンスを狙っている。 |
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完 (文責/高橋宏樹) |